花火の音が消えた夏 20150725
台風が来て、梅雨明けしたにも関わらず大雨の気候でじっとりとした日々を窓辺で外の気配を伺いながら過ごし、やっと土の上を歩けるなと思った途端に、近くの公園は夜が明けるや否や、昨日の夜中から雨と闘っていたセミ達がわんさと騒ぎ始める。公園が地響きをする唸りを上げていて、私は息苦しくて声が出なくなった。
これは散歩どころではない。やだよ、助けて。
おしっこやうんちも落ち着いて出来ない。わずか数日しか木の上で過ごせないセミ達は自分の生きざまを見せつけるように公園の木々もざわついているようだ。
唯、一夜にして一変した天候は、とても私の居場所を確保する余裕はなく、朝早くにパニックになりお母さんと逃げるようにして何時ものマットに寝入った。
このところ耳が役目を終えて物音をキャッチできないのに、なぜか蝉の声だけは地面から手を通して体に響いたのです。
やっぱり、じっとりと暑い空気が鼻の周りに滞留するんだよね。
お兄ちゃんたちがお祭りでそわそわしている気配が伝わり、ぼちぼち花火の季節かなと思っていると、私の好きなスイカの香りが部屋の中にも漂ってきています。
ほんのひと時だけ、暑い気候もいいもんだな とおもう。
スイカを口にする一瞬だけ本当に幸せな気持ちになるのです。
窓の外ではぞうきんが暑さを避け日陰に身を潜めています。
あなたはスイカの味は解りっこないわね。まだ歯が生えそろったばかりだし、もともとお水は好きじゃないんだものね。
夜、美味しい匂いが部屋を満たす、この時期の定番、ウナギの匂い。そうか、花火もあるわね、もともと私は火が怖いから駄目だけど、空が化粧をしたようになる一瞬はそれは見事の一言。
何にも聞こえないけれど、世の中は涼しさを水辺で演出しているはずよ。空の化粧は水辺に奥深さを映し出しているのかしら、かき氷が欲しいな。この夏をどうやって乗り切るか そんな事考えてもしょうがないわよね、 ご飯頂戴、お腹が減ったよ 。