お別れの時         20151013

おやすみ

16歳と9か月11日で我が娘 美留季 は老衰の為永眠しました。

本来なら、裏山に大きな穴を掘って、埋めてやり、柿の木でも植えてやろうというのが最良のお別れなんだけど、都会のお家には、畑はおろか小さな庭すら消え、鉢植えの花が栄養不足で枯枝を残している有様なのです。

わたしと息子とで動物霊園で火葬と納骨を行う事にしました。

娘は年の割にはすこぶる綺麗で若々しく、驚くくらい静かに眠りました。

声を掛ければ目を覚ますのではないだろうか といった様子に、友人から様々な話を聞かされてきた家内は、綺麗なリボンで長い口を結んでいました。

死後硬直で大きく口を開いて閉じなくて大変だと云われたらしいのですが、全く我が娘は眠ったままで、口に当てたリボンを嫌がっている様に映ったのです。

やっぱりはずそう となって、取り除くと嬉しそうに笑ったのでしょう。

たぶん、ありがとう 思い残しなく楽しい毎日を過ごし切れたよ といっているようでした。

何故か死後硬直は見えず、穏やかなままでいてくれました。

こじんまりとした部屋で、祭壇が中央に在り その手前に娘は花を添えられ如何にも見栄え良くすてんれす台に乗せられ、綺麗な織物を胸に掛けています。

そこでも左手を掴みましたが、瞼が開きそうな気がしたのです。

狭い5階建てのビルのこと、バックミュージックでお経がながれ、焼香をその場で執り行いフロアーを少し離れて眺めると 娘が不意に起き上って走り出しそうなそんな気がして、何度も瞬きをしてみました。

火葬炉の立ち合いは人間のように棺桶には入っておらず、すてんれす台がそのまま焼却台となるのでした。

何となくこの方が理に叶っている様におもえます。

見送るのも、このほうが良いし、私のように閉鎖を嫌うものには最高でしょう。

死んで居れば関係ないと思われるでしょうが、そこが事前に希望できるシステムの今、流行りませんかね?

動物霊園では、1時間半後に納骨となる為、外へ出なければなりません。

待合室までは無く、焼却炉は場所であり立ち合い後 扉を閉めると、受付に戻ります。

その意表を突いた狭さは 湿っぽくないから私にはよかった気がします。

遺骨は思ったより綺麗で、土に還してやりたいと思ってしまいます。

君はこれからも、私の心に居座り、時々顔を出して吠えるのでしょうか。

肉を食べるときには、私の足下に伏せをして、唾を垂れ 上目づかいに視線を走らせるのでしょうか。

不意にわたしたちの横を並んで歩いているかも知れません。

その時は、少しゆっくり歩くとしましょう。

君が色んな匂いを嗅ぐためにね、、

じゃあね。

覚えていて欲しい わたし   20151011・2040

074とうとうなのか やっとなのか もうなのか 気が付くとはなしに 意識は薄れて行ってしまった。

朝から病院へ行き、いつもの注射と栄養剤の点滴を行い、寒さしか感じなくなっておかしいなと思ったんだ。

左手が温かい、少しごつごつとした大きな掌が肉球に優しく触れる。陽だまりを浴びたふとんに包まれたような気になる。

ダメだ、両目がもう開かない。

落ちた体力が萎まぬように背中に精一杯の力を入れていたんだけど、お父さんのぬくもりで油断しちゃった。

床ずれを防ぐために、身体を小さな両手に抱えられ右を向く。お母さんの匂いに 詰まっている全身の細胞が水面に落とされた絵の具のように広がる。

ホントに駄目だ。漏れ始めたおしっこは止めようが無い。

オカシイ、飲んだはずの水が自然と口から零れる。

粉雪が大地にしみ込むように、赤色のタオルが濡れてゆく。

わたしが食べることが出来なくなると、老齢の身体はいともたやすく萎んだ。

日に日に力が入らなくなっていくのをあがく声は闇に飲まれる。

身体の中の血潮と心が煙のように少しづつ消えていく。

だんだんお父さんの手のぬくもりが解らなくなる、もっと強くつかんで。

手がちぎれるくらいに掴んで。

お母さんの匂いも霞みはじめる。頬をよせて。 もっと近くに来て。

薄れる意識、弛緩する神経、もう伝えれない事だらけ。

本当に有難う、たくさん遊んでくれたお兄ちゃんたち、みんな彼女も出来たみたいでよかったね。

私は、おばあちゃんになってもう老衰で消え去るんでしょうけど、わがままを言わせてほしい、あまりいい子ではなかったけれど、神様がいるならしっかり伝えて。

私の事を覚えて於いて下さい。

おかあさん、おとうさん、うえのおにいちゃん、したのおにいちゃん、私をいつまでも心の中にデンと置いて下さい。

私の人生はあなたたちのお蔭でとても楽しい人生でした。

走ったり泳いだり、散歩で道に迷ったり、笑い声が絶えなかったので、はしゃいで吠えてよく子供にいたずらをされたけど、こんな子がいたねってほかの人たちは私の家族に話すのでしょうか

ときどき、夢の中へ呼んでください。

あーあ、ねむい、、

おやすみ

生きとし思う事    20151010

いつのまにか1日のなんと短い事か、私は殆ど眠っていて、気が付くとお母さんが起こしてくれる。

固形物が食べれなくなってかれこれ1週間くらいたったかしら?

牛乳も詰まり始めた。何となく、喉を通ってくれない。

お父さんが無理やり入れてくれるけど、やっぱり咽る。

身体が思うように動かないからついついできる限りの声で 助けてって 叫んでみる。

でもそんなことをしているうちにすぐ眠くなる。

眠る前に私の耳に私の鼾が聞こえるの。 半分信じられないような事態なの。

起きている時間は今はいつもお母さんかお父さんが心配そうに私を見ているから、少しでも元気にしていたいと思っているの。

それが、思うようにはいかなくて、いつもお腹は減っているのに何も喉を通らなくてイライラしてしまうだけ。

もう少しだけ甘えさせてね、

歩けないかな、、

車に乗せて貰っても病院だもの、

嫌だよ、、注射は大っ嫌い、嫌だ、、

もう少しだけ楽しかった夢を見させてもらおうっと。

1日中誰かの気配を感じています。

昔、子守唄を聞かせて貰った記憶があるんだけど、

何かなあ そんな頃の記憶がトランプみたいに捲れては心が和んで来るよ。

いつまでも背中をさすってもらって眠りたくなるわね。

たのしい思い出が折り重なって、瞼を閉じさせていくのかもしれない。

ちょっと眠らせてください。

少し元気を取り戻すから。

む む ん、、

眠れない夜には   20151006

足腰が最近は重く感じるね、相変わらず縁側の外では、ぞうきんが朝ご飯を食べ終えると遊びに来ては騒いでいるから、気が気じゃないわ。

ぞうきんったら犬の散歩をしている人に声を掛けたり、自転車で買い物帰りの人に一生懸命お愛想を振るんだから、、しっかりしてるよね、全く。

お母さんのお友達がいつも縁側からのぞいてくれて 私が生きているか確認をしてるんだけど、大体私は寝ているの。

いくら頑張っても毎日せいぜい2時間とか3時間しか目が開かないのよ。

ご飯も、喉を通らなくなってきたような気がする。

何時もなら食べれた半生のご飯がいつの間にか喉を通らないし、鶏の胸肉まで食べれなくなってきたからやっかい。

そんでもって缶詰までが食べれなくなってきた。

今日は朝から固形物が入らず、牛乳もいつもの半分が精いっぱい。

散歩で歩くことも困難になっている。いつものひょこの馴れ馴れしい歩み寄りに威嚇が出来ないよ。

私ももう老齢で、意識が無くなっているのです。痛みに反応するのも少しづつ無くなり、やめてって吠えれないよ。

お母さんが毎日病院に連れて行ってくれるから、ありがた迷惑な話だよ。

はっきり言えないけど、注射を背中に打たれるし、点滴はされるし もうさんざんだよね ただもっと歩きたかった。

突然元気が出ないかしらね。お父さんとも、お兄ちゃんとも遊び足りないって思うのよ。

お母さんが一番遊んでいるけど、もっと遊びたい。

バギーのお世話になってもう1年以上になるからね。

耳が聞こえなくて、虫の羽音が鳴り響いているような気がするねえ。

最近は吠える事が出来ないから、せめて お手 くらいしたいねえ。

アイスクリームもつかえるよ。

むりくりお父さんが飲み物を入れてくれるだけましかな。

あー、眠い、、、。

あれ、おしっこ ちびった。 良かった、今日は ワカッタ 少しだけ。