16歳と9か月11日で我が娘 美留季 は老衰の為永眠しました。
本来なら、裏山に大きな穴を掘って、埋めてやり、柿の木でも植えてやろうというのが最良のお別れなんだけど、都会のお家には、畑はおろか小さな庭すら消え、鉢植えの花が栄養不足で枯枝を残している有様なのです。
わたしと息子とで動物霊園で火葬と納骨を行う事にしました。
娘は年の割にはすこぶる綺麗で若々しく、驚くくらい静かに眠りました。
声を掛ければ目を覚ますのではないだろうか といった様子に、友人から様々な話を聞かされてきた家内は、綺麗なリボンで長い口を結んでいました。
死後硬直で大きく口を開いて閉じなくて大変だと云われたらしいのですが、全く我が娘は眠ったままで、口に当てたリボンを嫌がっている様に映ったのです。
やっぱりはずそう となって、取り除くと嬉しそうに笑ったのでしょう。
たぶん、ありがとう 思い残しなく楽しい毎日を過ごし切れたよ といっているようでした。
何故か死後硬直は見えず、穏やかなままでいてくれました。
こじんまりとした部屋で、祭壇が中央に在り その手前に娘は花を添えられ如何にも見栄え良くすてんれす台に乗せられ、綺麗な織物を胸に掛けています。
そこでも左手を掴みましたが、瞼が開きそうな気がしたのです。
狭い5階建てのビルのこと、バックミュージックでお経がながれ、焼香をその場で執り行いフロアーを少し離れて眺めると 娘が不意に起き上って走り出しそうなそんな気がして、何度も瞬きをしてみました。
火葬炉の立ち合いは人間のように棺桶には入っておらず、すてんれす台がそのまま焼却台となるのでした。
何となくこの方が理に叶っている様におもえます。
見送るのも、このほうが良いし、私のように閉鎖を嫌うものには最高でしょう。
死んで居れば関係ないと思われるでしょうが、そこが事前に希望できるシステムの今、流行りませんかね?
動物霊園では、1時間半後に納骨となる為、外へ出なければなりません。
待合室までは無く、焼却炉は場所であり立ち合い後 扉を閉めると、受付に戻ります。
その意表を突いた狭さは 湿っぽくないから私にはよかった気がします。
遺骨は思ったより綺麗で、土に還してやりたいと思ってしまいます。
君はこれからも、私の心に居座り、時々顔を出して吠えるのでしょうか。
肉を食べるときには、私の足下に伏せをして、唾を垂れ 上目づかいに視線を走らせるのでしょうか。
不意にわたしたちの横を並んで歩いているかも知れません。
その時は、少しゆっくり歩くとしましょう。
君が色んな匂いを嗅ぐためにね、、
じゃあね。