僕の故郷には畑と田んぼがある。小さな山天神様を祀っている天神山があり、その昔その神様を管理していたのが僕の家であったのであろうか、僕は天神くんと呼ばれていたのである。
8歳ぐらいのとても暑い夏、我が家が使用管理している田んぼは、近くの2区画だけで、他は遠いので、ほったらかしにしている。
田んぼでは、米を主にして、野菜、果物を作っていた。特に夏休みには僕の命をつないでくれる大切な場所である。春から、ニラ、ネギ、大葉、ナス、キュウリ、トマト、マクワウリ、瓜、スイカ、畦道に植える枝豆が、緑の稲穂の横でわんさか実のである。
僕の家だけではなく、他の田んぼもほぼ似たり寄ったりであったと思う。
幼少期より田畑を管理してきた僕にとってはことスイカ、マクワウリに関しては今ではいろんなところで紹介されているが、苗に実った果実は1本につき2個まで間引き、日付を付け、収穫時期を明記し、予定を立て日々チェックするのである。
当然大きく育てる基本であり、最低でも土曜日曜は進行状況を確認しているし、水路の毎朝の確認もあるので、ほぼすべての収穫時期、大きさなど父も僕も把握している。
何故か夏休みのとある日に、姉貴と姉の友達連れて、水泳に行く羽目になった。何時も学校指定の池か、暑い時は山奥の冷たい水の池かの2箇所を行っている僕は、教わる以前に勝手に泳げたので、どこでも自由に行っていたのである。山奥の方の池は水が青色で綺麗で魚はハヤ、赤モツ、黄モツ、青モツしかおらず、指定の池は鮒、鰻、カラス貝などがいて結構汚れているので、気持ちのいい方へ行こうということになり、泳ぎの人はほとんどいない池に連れて行ってやろうとカッコをつけてしまった。
同行二人には浮き輪を持たせいざ出発の折、休憩を30分で入れなければならずどうしたものかと考えた挙句、マクワウリ、スイカを冷やして食べようとつまらない考えが頭をよぎった。トマトやマクワウリは数が多いから少々食べても構わないのだが、スイカは、ばれるわな、日付あるし、収穫時期もわかっているし、でも泳いだら腹減るし暑いわな、などと幼心を悩ませた末
25センチ強の中ぐらい、まず甘いだろうという形のものを取ることにした。ついでに日付記録は捨てた。怒られるのは覚悟の上、しょうがない。
池で、重しようの石にスイカを括り、底に沈め冷やす。3メートルくらいの水面下で30分ほど冷やし、美味しく三人で食べた。勿論、数日後、おやじの拳固が頭に飛んできたことは言うまでもあるまい。